「半導体株が上がった」——このニュース、毎週のように目にしますよね。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。その文に出てくる「半導体」とは、いったい何のことを指しているのでしょうか。
スマホの頭脳になるチップも、写真を保存しておくチップも、EV(電気自動車)のモーターに大電流を流すチップも、世間ではぜんぶまとめて「半導体」と呼ばれます。ところが、これらは役割もお客さんも、儲かるタイミングも、まるで違います。「半導体株」とひとくくりにするのは、「乗り物株が上がった」と言うのに近い。新幹線も自転車も貨物船も、全部まとめて「乗り物」と呼んでいるようなものなのです。
でも安心してください。半導体は、たった4つの役割に分けて考えると、一気に視界が晴れます。ニュースに飛び交う CPU・GPU・DRAM・NAND・HBM・パワー半導体——こうした呪文のような言葉たちが、一枚の地図の上にきれいに収まっていく。今回はその「地図の凡例(はんれい)」を一緒に作ります。
この凡例を一度頭に入れると、決算ニュースやテック報道を読んだとき、「あ、これはロジックの話だな」「これはメモリーの値段の話か」と、瞬時に分類できるようになります。それが、ニュースの読み方が変わる瞬間です。本シリーズ「半導体を基礎から学ぶ」全8回の第1回として、製造工程や装置、ファウンドリといった話に進む前に、まずはこの地図を手に入れましょう。
まず全体像:半導体は「2つの大きな組」に分かれている
4種類の話に入る前に、もう一段上の階層から眺めてみましょう。実は半導体は、おおきく2つの系統に分けて考えると、構造がとても美しく見えてきます。
ひとつは、情報(0と1のデジタルデータ)を扱う組。計算したり、記憶したりする半導体です。コンピューターの「中の世界」を担当する、いわば内向きのチーム。
もうひとつは、現実世界やエネルギーを扱う組。光・音・温度・電流といった「アナログな現実」と、デジタルの世界をつなぐ半導体です。コンピューターの「外の世界」と向き合う、外向きのチームと言えます。
この2つの組を、さらに2つずつに割ると、ちょうど4分類になります。
| 大きな系統 | 4分類 | ひとことで言うと | 比喩 | 代表的なチップ |
|---|---|---|---|---|
| 情報を扱う組 | ① ロジック | 計算する「頭脳」 | 脳 | CPU・GPU・ASIC |
| 情報を扱う組 | ② メモリー | 覚えておく「記憶」 | 記憶 | DRAM・NAND |
| 現実を扱う組 | ③ アナログ | 現実とデジタルの「通訳」 | 五感 | センサー・電源IC |
| 現実を扱う組 | ④ パワー | 電気を操る「力持ち」 | 筋肉 | パワー半導体 |
「脳・記憶・五感・筋肉」。この4つの比喩を、ぜひ最後まで覚えておいてください。本記事ではこの言葉を一貫して使います。実はスマホ一台のなかにも、この4種類がぜんぶ入っていて、役割分担しながら動いているのです。
そして大事なのは、この4つは別々の会社が、別々の論理で戦っているということ。あとで見るように、AIブームで沸いているのはこのうち2つで、残りの2つはまったく別のリズム(たとえば車の販売台数や設備投資の波)で動いています。だからこそ「半導体」とひとくくりにすると、ニュースの意味を取り違えてしまう。ここから一つずつ、解像度を上げていきましょう。
- ·CPU・GPU・ASIC
- ·データを処理・機器を制御
- ·用途: スマホ/PC/サーバー
- ·例: エヌビディア・AMD
- ·DRAM=一時記憶(揮発性)
- ·NAND=保存(不揮発性)
- ·用途: スマホ/PC/サーバー
- ·例: マイクロン・キオクシア
- ·アナログ=光/音/温度を処理
- ·パワー=電圧・電流を制御
- ·用途: スマート家電・EV・発電
- ·例: イメージセンサー等
① ロジック — 計算する「頭脳」(CPU・GPU・ASIC)
最初は、いちばん花形の「ロジック」です。
比喩で言うと、ロジックは「頭脳」。 データを受け取って、足し算・引き算・判断・並べ替えといった「計算」を実際におこなうチップです。コンピューターが「賢く動く」のは、すべてこのロジックの働きによります。ニュースで「半導体株が上がった」と言うとき、多くの場合この話をしています。
頭脳と言っても、得意分野で3つのキャラクターに分かれます。レストランの厨房(ちゅうぼう)にたとえてみましょう。
- CPU(汎用) — 何でもこなす「総料理長」。和洋中なんでも作れるけれど、一度に大量には作れない。1つひとつの仕事を順番に、しかし臨機応変にこなすのが得意で、パソコンやサーバーの司令塔です。
- GPU(並列) — 同じ料理を何百皿も一気に作る「大量調理チーム」。一人ひとりは単純作業でも、人海戦術で膨大な計算を同時にさばく。もともとはゲームの映像(画像処理)用でしたが、AIの計算とこの「人海戦術」の相性が抜群でした。
- ASIC(専用) — たった一品を究極まで突き詰めた「専門店」。応用は利かないけれど、その用途では誰よりも速く、省エネ。特定の処理に特化して設計された専用チップです。
CPUとGPUの違いは、こう言い換えてもいいでしょう。CPUは「なんでも作れる凄腕シェフが数人」、GPUは「単純な作業を黙々とこなすアルバイトが数千人」。AIの計算は「同じ作業の途方もない繰り返し」なので、大人数で一気に片づけるGPUが圧倒的に向いていた、というわけです。
ニュースではこう出てくる
AIブームでロジックが爆発的に伸びた——その主役がGPUでした。「AIの学習には大量の並列計算が必要 → だから大量調理が得意なGPUが引っ張りだこ」という流れです。「AI半導体」「データセンター向けGPU」「AIアクセラレータ」といった言葉が出てきたら、まずこのGPUの話だと思って間違いありません。
もう一つ、最近の報道で増えているのが「自社ASIC」というキーワードです。クラウドの巨人たち(グーグルのTPUなどが有名)は、自分たちのAIサービス専用のチップを自前で設計しはじめました。汎用のGPUを買うのではなく、自分の用途に究極特化した「専門店」を自社で持つ動きです。この「汎用GPU 対 専用ASIC」の綱引きは、いまのAI半導体を読むうえで最も重要な論点のひとつです。
この分野の代表格がエヌビディア(NVDA)です(その分類の代表例としての中立な紹介です)。直近の通期売上はおよそ 2,159億ドル(FY2026・前年比 +65.5%)、純利益率は 55.6% に達しています(出所:SEC EDGAR等の一次データ)。売上の半分以上が利益として残る——これはAIブームでGPUがいかに必要とされているかを物語る数字です。これを追う立場にあるのがAMDで、こちらは直近通期売上およそ 346億ドル(FY2025・前年比 +34.3%)、純利益率 12.5%(出所:同)。同じGPUを手がける両社でも、規模も利益率も大きく違うことが分かります。この差は、それぞれが置かれた競争環境の違いを映す数字として読むと理解が深まります。
【ここを押さえると決算がわかる】 ロジックの決算は「どの計算需要が伸びているか」、とくに「データセンター向けの売上が伸びているか」で読むのが基本です。スマホ・ゲーム向けより、AI・サーバー向けの数字がどう動いたかが業績の主役になります。「AI需要」という言葉が出てきたら、まずロジックの話だと思って読み始めてください。
② メモリー — 覚えておく「記憶」(DRAMとNAND)
次は「メモリー」。データを覚えておくためのチップです。
比喩で言うと、メモリーは「記憶」。 頭脳(ロジック)がどんなに優秀でも、計算した結果を覚えておく場所がなければ仕事になりません。その「覚えておく」役割を一手に引き受けるのがメモリー半導体です。そしてメモリーには、性格の違う2種類があります。ここは初心者がいちばん混同しやすいポイントなので、机にたとえて丁寧に見ていきましょう。
- DRAM(ディーラム)= 作業机の上 — いま使っている書類を広げておく場所。出し入れがとても速い反面、電源を切ると中身が消えてしまいます。これを「揮発性(きはつせい)」と呼びます。「一時記憶」の担当です。
- NAND(ナンド)= 引き出しの中 — 使い終わった書類をしまっておく場所。出し入れはDRAMより遅いけれど、電源を切っても中身が残ります。こちらは「不揮発性(ふきはつせい)」。写真やアプリを「保存」しておく担当です。
スマホで「メモリ8GB/ストレージ256GB」と書かれているのを見たことがありませんか。前者の作業机がDRAM、後者の引き出しがNAND(保存)にあたります。机が広いほど一度にたくさんの作業を並行でき、引き出しが大きいほど写真や動画をたくさん保存できる、というイメージです。
ニュースではこう出てくる
メモリーの世界でいま熱いのが、HBM(エイチビーエム)という言葉です。これは「High Bandwidth Memory(広帯域メモリー)」の略で、ざっくり言えばDRAMを何枚も垂直に積み上げて、データの通り道を極太にした特別なメモリー。AIの頭脳であるGPUは猛烈な勢いでデータを読み書きするため、すぐ隣に「超高速の作業机」が必要になります。そのパートナー役がHBMで、AIチップの相棒として需要が急増しています。
ここで初心者が必ず引っかかるので先に言っておきます。HBMはあくまで「メモリー(DRAM)」の仲間です。AIチップの一部だからとロジックに分類してしまいがちですが、役割は「覚えておく」こと。ここは後の章でもう一度念押しします。
メモリーには、もう一つ覚えておきたい特徴があります。値段(市況)の波がとても大きいことです。世界中でほぼ同じ規格の製品を作るため、製品の性能差がつきにくく、需要と供給のバランスで価格が大きく上下します。いわば市況産業としての性格が強い。だからメモリー企業の決算は、ロジックとはまた違うリズムで動きます。
代表的なのが、DRAMとNANDの両方を手がける米国のマイクロン(MU)。直近の通期売上はおよそ 374億ドル(FY2025・前年比 +48.9%)、純利益率 22.8%(出所:SEC EDGAR等)。NAND型フラッシュメモリーの専業大手としては、日本の**キオクシア(285A)**があり、直近の通期売上はおよそ 2.34兆円(2026年3月期・前年比 +37%)、純利益率 23.7%(出所:同社決算)。両社とも大きく伸びていますが、これはAI需要に加えてメモリー市況が上向いたことが効いています。
【ここを押さえると決算がわかる】 メモリーの決算は「売れた量 × 値段(単価)」、とりわけ「価格(単価)が上がっているか下がっているか」で読みます。同じ量を売っても、価格が上がれば利益は跳ね上がり、下がれば一気にしぼむ。これがメモリーの宿命です。決算で「ビット出荷」「平均販売価格(ASP)」という言葉を見たら、それがメモリーの体温計。「HBMが好調」というニュースは、AI向けの高付加価値メモリーが伸びているサインです。
③ アナログ — 現実世界とデジタルの「通訳」
ここから先は、もう一方の系統——現実世界を扱う組に入ります。3つ目は、少し地味ですが、なくては困る「アナログ」です。
比喩で言うと、アナログは「五感(通訳)」。 私たちが暮らす現実の世界は、光・音・温度・圧力といった、なめらかに変化する「アナログ」な情報であふれています。一方、コンピューターが扱えるのは0と1のデジタル信号だけ。この**二つの世界のあいだに立って翻訳する「通訳」**が、アナログ半導体です。
スマホのカメラを思い浮かべてください。レンズから入ってきた「光」を、コンピューターが処理できる「データ」に変換しているチップ——これがイメージセンサーで、アナログ半導体の代表選手です。ほかにも、温度を測る、傾きを感じ取る、音を拾う……家電にも車にも、こうしたセンサーが無数に組み込まれています。デジタルの世界がどれだけ発達しても、入口と出口で現実とつながる以上、通訳の仕事はなくなりません。
ニュースではこう出てくる
アナログ半導体には、ロジックやメモリーとは違う面白い特徴があります。最先端の微細化競争(より小さく作る競争)とは少し距離があり、景気の波に比較的強いとされる点です。
ロジックは「いかに小さく速く作るか」という熾烈(しれつ)な技術競争の世界。一方アナログは、長く使われ続ける枯れた技術も多く、製品の種類が膨大で、用途が家電・自動車・産業機器と幅広く分散しています。一つひとつの売上は小さくても、特定の流行に左右されにくく安定して稼げるものが多い。だからニュースでも、「AIで爆発的に伸びた」という派手な文脈より、車載や産業機器といった着実な需要の文脈で登場することが多いのです。「イメージセンサー」「車載センサー」「アナログIC」といった言葉が手がかりになります。
日本企業でこの分野を語るとき外せないのが、**ソニーグループ(6758)**です(中立な紹介です)。スマホ向けのイメージセンサーで世界的な地位を築いており、私たちが毎日撮る写真の多くに、その「目」が関わっています。現実とデジタルをつなぐ「通訳」として、生活のあらゆる場面で静かに働いている分類です。
【ここを押さえると決算がわかる】 アナログの決算は「どの最終製品が売れているか」で読みます。スマホ、車、家電——こうした完成品の販売が好調なら、そこに通訳として入っているアナログ半導体も伸びる。ひとつの巨大な需要に賭けるのではなく、幅広い用途に支えられた「分散型」のビジネスとして読むのがコツです。AIブームの熱とは別のリズムで動くので、「半導体全体は不調なのに、ここは堅調」という場面も起きえます。
④ パワー — 電気を操る「力持ち」(EV・発電)
現実を扱う組の、もうひとつの主役。最後は「パワー半導体」です。
比喩で言うと、パワー半導体は「筋肉(力持ち)」。 これまでの3つが「情報」というごく小さな電気信号を扱う繊細な仕事だったのに対し、パワー半導体が扱うのは「電力そのもの」。大きな電圧・大きな電流を、ムダなく効率よくコントロールする力仕事の専門家です。
水道にたとえると分かりやすいでしょう。家庭の蛇口(小さな電流)ではなく、街全体に水を送るダムの放流ゲート(大きな電力)を、必要なぶんだけ正確に開け閉めする——そんなイメージです。EVのモーターを回す、太陽光や風力でつくった電気を送り出す、工場の大型機械を動かす。こうした「大電力の現場」で活躍します。
ニュースではこう出てくる
パワー半導体のニュースは、ほぼ必ず「省エネ」と「電動化」とセットで出てきます。
なぜなら、電気を変換するとき、どうしても一部は熱としてムダに失われ、そのムダ(ロス)の少なさがパワー半導体の腕の見せどころだからです。EVなら、電力ロスが減ればそのぶん航続距離が伸びる。太陽光や風力発電なら、ロスが減れば発電した電気をより多く届けられる。つまりパワー半導体の良し悪しが、製品全体の性能に直結します。だからこそ、ムダの少ない新しい材料(次世代パワー半導体)が研究され、ニュースでもしばしば話題になります。
「EVの電費」「車載パワー半導体」「再生可能エネルギー」「新素材」といった文脈で登場するのが特徴です。つまりパワー半導体は、AIブームというより、EVの普及や再生可能エネルギーの拡大という、もっと大きな社会の流れに乗ったチップ。決算ニュースを読むときも、半導体業界の話というより、自動車やエネルギーの話の延長線上に出てくることが多いのです。
【ここを押さえると決算がわかる】 パワーの決算は「自動車・産業向けの需要」と「新材料への投資」で読みます。EVの販売台数、再エネ投資の動向、産業機械の設備投資——これらが追い風かどうかが、需要を左右します。AI関連のキーワードがなくても、慌てないでください。パワーはそもそも別の地図の上にいるのです。
では、いま「AIで伸びている」のはどれ?
ここまで4分類を見てきました。では、AIブームで実際に伸びているのは、どこなのでしょうか。
答えは明快で、**①ロジック(とくにGPU)と、②メモリー(とくにHBM)**の2つです。
AIの計算は「頭脳(GPU)が、すぐ隣の超高速な記憶(HBM)と、猛烈なスピードでデータをやり取りする」という構図で成り立っています。つまりAIが伸びると、頭脳と記憶の両方に需要が集まる。情報を扱う組の2つが、そろって主役になっているのです。
これは、業界全体の数字にもはっきり表れています。米半導体工業会(SIA)によると、2024年の世界半導体売上は前年比 +19.1% と大きく伸びました。製品別に見ると——
| 製品分類 | 2024年の状況(出所:SIA) |
|---|---|
| ロジック | 約 2,126億ドル。製品別で最大のカテゴリー |
| メモリー | 約 1,651億ドル。前年比 +78.9% という急伸。うち DRAM は +82.6% |
ロジックがそもそも一番大きな塊であること、そしてメモリーが前年から約8割という驚異的な伸びを記録したことが読み取れます。このメモリーの急伸の背景に、AI向けのHBM需要があったわけです(出所:SIA)。
一方で、③アナログと④パワーは、この表には大きくは顔を出しません。とはいえ、これは「劣っている」という意味ではありません。繰り返しになりますが、この2つは車・家電・EV・発電という別のリズムで動いているから。自動車の電動化、再エネ、IoT(あらゆるモノのデジタル化)といった、別の長い潮流に支えられた分類です。「半導体全体が好調」というニュースの実態は、しばしば「ロジックとメモリーが牽引している」という意味なのだ——そう翻訳できるようになると、グッと解像度が上がります。
ちなみに、半導体が「どの用途でどれだけ使われているか」を見ると、世界の姿がもう少し立体的に見えてきます。
| 用途 | 需要シェア(2024年・概算) |
|---|---|
| スマホ | 21% |
| サーバー | 14% |
| 車(自動車) | 12% |
| その他 | 11% |
| PC | 9% |
| 民生(家電など) | 9% |
| 産業 | 9% |
| 基地局 | 8% |
| タブレット | 2% |
(出所:業界資料/SIA。端数処理のため合計は100%になりません)
スマホが最大の用途であること、そしてサーバー(=データセンター=AI)が存在感を強めていること——この土台があってこそ、ロジックとメモリーが語られます。同時に、車が1割を超えていること。この「車」の存在感こそ、③アナログと④パワーが地味に効いてくる土台です。
- スマホ22%
- サーバー15%
- 車13%
- PC9%
- 民生9%
- 産業9%
- 基地局8%
- その他・タブレット14%
【本記事の核心】決算ニュースの読み方 — 4分類で見分ける実践ガイド
ここまでの知識を、実際に使える「武器」に変えましょう。本シリーズでいちばん持ち帰ってほしいのが、この章です。
4分類を覚える本当の目的は、ニュースや決算の「読み方」が変わることにあります。同じ「半導体が好調」という見出しでも、それがどの分類の話かによって、意味はまったく変わるからです。実践のコツは、ニュースに出てくるキーワードから、4分類のどれかを逆引きすること。次の早見表を、ぜひお守りがわりに使ってください。
| ニュースに出てくる言葉 | おそらくこの分類 | 何が起きている話か |
|---|---|---|
| AI向けGPU/CPU/データセンター/AIアクセラレータ | ① ロジック | 頭脳の需要。AI投資の話 |
| 独自チップ/TPU/自社開発のAI半導体 | ① ロジック(ASIC) | 汎用GPUか専用ASICかの綱引き |
| HBM/DRAM価格/メモリー市況/単価・値上がり | ② メモリー | 記憶の需給と価格の話 |
| ストレージ/フラッシュ/NAND | ② メモリー | 保存用メモリーの話 |
| イメージセンサー/車載センサー/電源IC | ③ アナログ | 現実とデジタルの通訳の話 |
| EV/航続距離/パワー半導体/再エネ/新素材 | ④ パワー | 電気を操る力持ちの話 |
そして、見出しを読んだら、さらに一段深く「この分類は、何で業績が決まるんだっけ?」と自問してみてください。各章の小ボックスで触れた通り、業績のドライバーは分類ごとに違います。
- ロジックなら → データセンター(AI)向けが伸びたか
- メモリーなら → 価格(単価)が上がったか下がったか
- アナログなら → どの最終製品(スマホ・車・産業)が好調か
- パワーなら → 自動車・産業向けの需要と、新材料への投資
たとえば、こんな見出しに出会ったとします。
- 「AI需要でデータセンター向けが好調、GPU出荷が伸びる」→ キーワードは「GPU」「データセンター」。これは①ロジックの話。注目すべきは演算需要の伸びと、汎用GPUか専用ASICかという論点。
- 「メモリー市況が回復、HBMの引き合い強く」→ キーワードは「メモリー市況」「HBM」。これは②メモリーの話。技術だけでなく、単価(値段)が利益を左右する。
- 「EV向けの需要が支えに、車載パワー半導体が増加」→ キーワードは「EV」「車載パワー」。これは④パワーの話。AIとは別の、電動化という地図の上にいる。
つまり「半導体大手が最高益」というニュースを見たとき。それがメモリー企業なら「ああ、価格が上がったんだな(市況が良かったんだな)」と読め、ロジック企業なら「AI向けが伸びたんだな」と読める。同じ"好調"でも、裏側の物語がまったく違うことが見えてきます。これが、4分類という地図を持つ人と持たない人の、決定的な差です。
そしてもう一つ大切なのが、1社が複数の分類にまたがることがあるという視点。たとえばソニーは③アナログ(イメージセンサー)の代表として登場しますが、会社全体ではゲームや音楽など半導体以外の事業も大きい。「ソニーの決算」を読むときは、どの事業の話なのかを切り分ける必要があります。会社名だけで「これは○○の銘柄」と決めつけず、事業ごとに4分類のどこに当たるかを見る癖をつけると、読み違いが減ります。
- ロジック → データセンター(AI)向けが伸びたかを見る
- メモリー → 価格(単価)が上がったか下がったかを見る
- アナログ → どの最終製品(スマホ・車・産業)が好調かを見る
- パワー → 自動車・産業向け需要と新材料への投資を見る
初心者がつまずきやすい「3つの混同ポイント」
最後に、半導体を学びはじめた人がほぼ全員つまずく「まぎらわしいペア」を3つ、ここで一気に整理しておきます。ここを乗り越えれば、地図はもう手の中です。
① 「HBMはロジック?」→ いいえ、メモリーです
いちばん多い勘違いがこれです。HBMはAIチップ(GPU)のすぐ隣にくっついていて、ニュースでもAIとセットで語られるので、つい「ロジックの仲間」だと思ってしまう。
でも、HBMの正体はDRAMを積み上げた特別なメモリー。役割はあくまで「覚えておく」ことです。AIチップは「頭脳のGPU」と「記憶のHBM」がセットで働く構造であって、両者は別の分類。"AIチップ"という1つの箱の中に、実は別々の組の選手が同居している——GPUが頭脳、HBMがその相棒の記憶という主従関係をイメージすると間違えません。「AI関連だからロジック」ではなく、「何をするチップか(計算か、記憶か)」で分類しましょう。
② 「GPUとASICは何が違う?」→ 汎用か、専用か
どちらもAIの計算に使われる「頭脳」の仲間ですが、思想が真逆です。GPU(汎用)は何でもこなす大量調理チーム、ASIC(専用)は一品特化の専門店。汎用は柔軟だけれど効率はそこそこ、専用は融通が利かないけれど究極に効率的です。
クラウド大手が自社ASIC(TPUなど)を作りはじめた動きは、「汎用品を買うより、自分専用を持ったほうが効率がいい」という判断の表れ。AI半導体の世界は、この「汎用で行くか、専用で行くか」という選択の上で動いています。**「汎用GPU vs 専用ASIC」**という対立構図は、今後のニュースでも繰り返し出てくるので、ぜひ頭に入れておいてください。
③ 「DRAMとNANDの違いは?」→ 消えるか、残るか
同じ「記憶」でも、電源を切ったときに中身が消えるのがDRAM(揮発性)、残るのがNAND(不揮発性)。DRAMは出し入れが速い「作業机の上」、NANDは保存しておく「引き出しの中」でした。
スマホで言えば、アプリをサクサク動かす作業領域がDRAM、写真やデータを保存しておくのがNAND。「速いけれど消える」DRAMと「遅いけれど残る」NAND——両方が必要だからこそ、コンピューターはどちらも積んでいるのです。この「消えるか・残るか」という一点だけ覚えておけば、もう混同しません。
この3つを「あ、また混同しかけた」と気づけるようになれば、あなたはもう半導体の初心者を卒業しつつあります。
まとめ — そして次回への地図
おつかれさまでした。今回手に入れた「凡例」を、最後にもう一度確認しておきましょう。
- 半導体は大きく2つの組に分かれる。 情報を扱う組(①ロジック=頭脳/②メモリー=記憶)と、現実を扱う組(③アナログ=通訳/④パワー=力持ち)。この上位フレームを持つと、4分類が一枚の地図に収まる。スマホ一台のなかで、脳・記憶・五感・筋肉として役割分担している。
- AIで先行しているのは①ロジック(GPU)と②メモリー(HBM)。 GPU(頭脳)とHBM(記憶)がセットで需要を牽引。SIAによれば2024年はメモリーが前年比 +78.9% と急伸し、ロジックは製品別で最大の塊だった。③アナログと④パワーは、車・家電・EV・発電という別のリズムで動く。
- 各分類には代表的な企業がいる。 ロジックならエヌビディアやAMD、メモリーならマイクロンやキオクシア、アナログならソニー。いずれも「その分類の代表例」として中立に押さえておく。ただし1社が複数分類にまたがることもあるので、会社名でなく事業ごとに見る。
- ニュースは「どの分類の、何が原動力か」で読む。 GPU・データセンターと書いてあれば①、メモリー市況・HBMなら②、センサー・車載なら③、EV・電動化なら④。そして「この分類は何で業績が決まるか」まで自問する。同じ"好調"でも、裏側の物語は分類ごとにまったく違う。
参考までに、StockCode独自のAIスコア(0〜100の自社指標。市場データではありません)では、本記事に登場した企業はエヌビディア98/キオクシア88/AMD84/マイクロン75/ソニー70となっています。これはあくまで当サイトの分析指標であり、銘柄の優劣や売買を示すものではない点にご注意ください。
さて、ここまでで「半導体には何種類あるのか」という地図ができました。今回つくった「4分類=役割の地図」は、いわば半導体を横から眺めた地図でした。次回からは視点を変え、半導体がどうやって作られるのか——次回(第2回)は、**砂(シリコン)から一枚のチップが生まれるまでの「製造工程」**をたどります。「前工程」と「後工程」、ウェハーと露光、そして製造を担うファウンドリ(受託製造)や、それを支える製造装置メーカー。ニュースでよく見るのに正体がつかみにくい言葉たちが、今回の4分類という土台があれば、また一つずつ地図に収まっていきます。
ニュースの見出しが、ただの言葉の羅列ではなく、「ああ、これは頭脳の話だ」「これは記憶の市況の話だ」と立体的に見えてくる——その変化こそが、今回の学びのいちばんの収穫です。次回もまた、地図を一枚ずつ増やしていきましょう。
免責事項:本記事は半導体および関連企業について学ぶことを目的とした情報提供のみのコンテンツであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。記載した企業はあくまで各分類の代表例として中立に紹介したものであり、将来の株価や業績を予測・保証するものではありません。本文中の数値は、SIA(米半導体工業会)、SEC EDGAR、各社の開示資料、業界資料などの一次データに基づいていますが、その正確性・完全性を保証するものではなく、最新の情報は必ず公式の開示資料をご確認ください。「StockCode独自AIスコア」は当サイト独自の分析指標であり、市場で取引される客観的な市場データではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。