「半導体は成長産業」とよく言われますが、では“どのくらい大きく、どのくらいの速さで”伸びているのか。感覚ではなく、SIA(米半導体工業会)やWSTS(世界半導体市場統計)という業界団体の公表データで、市場規模の現在地を押さえましょう。数字を一度つかんでおくと、個別ニュースの大きさが正しく測れるようになります。
まず全体像 — 2025年の世界市場は約$791B
世界の半導体売上高(年間)は、近年こう動いています。
| 年 | 世界半導体売上(年間) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2023年 | 約$526.8B | — |
| 2024年 | 約$627.6B | +19.1% |
| 2025年 | 約$791.7B | +25.6% |
| 2026年(予測) | 約$975B | 約+23% |
出所: SIA(2024・2025実績)/WSTS(2026予測)。$1B=10億ドル。
2023年はパソコンやスマホの調整局面で落ち込みましたが、2024年・2025年と二桁成長で急回復。WSTSの見通しでは2026年に約$975Bと、年間$1兆ドルの大台が目前に迫ります。業界では、AI・EV・5G/6G・先端製造などを背景に、2030年ごろに年$1兆ドルへ到達するという見方が一般的です。
- ·2024年 約$212.6B
- ·製品別で最大
- ·CPU・GPU・ASIC
- ·AI向けGPUがけん引
- ·2024年 約$165.1B
- ·前年比 +78.9%
- ·DRAMは+82.6%
- ·HBM需要が急増
- ·残りを分け合う
- ·車載・産業で幅広い
- ·景気変動に比較的強い
- ·市場の“底”を支える
製品別に分けると — ロジックとメモリーが二強
市場全体を製品の種類で割ると、伸びの“正体”が見えてきます。2024年(SIA集計)の主役は次の2つでした。
- ロジック:約$212.6B。CPU・GPU・ASICなど計算用チップで、製品別では最大カテゴリー。AI向けGPUがけん引役です。
- メモリー:約$165.1B(前年比+78.9%)。なかでもDRAMは+82.6%と全カテゴリー最大の伸び。AIチップに寄り添うHBM(広帯域メモリ)の需要が効きました。
残りはアナログ、マイコン、センサー、ディスクリート(個別半導体)などが分け合います。アナログは派手な急伸こそ無いものの、車載・産業で幅広く使われ、市場の“底”を支える安定層です。「伸びはロジックとメモリーが主役、幅広さはアナログが支える」と覚えると整理しやすくなります。
なぜ2024–25年に再加速したのか — AIという新しい需要
再加速の最大の理由は、生成AIというまったく新しい用途が立ち上がったことです。AIの学習・推論には高性能GPUが要り、そのGPUには大量のHBMが要る。つまり「AIを賢くしたい」という欲求が、ロジックとメモリーの需要を同時に押し上げました。
象徴がエヌビディア(NVDA)で、直近通期売上は$215.9B(前年比+65.5%、FY2026)。1社の売上が、数年前の世界市場の相当部分に匹敵する規模まで膨らんでいます。市場全体の二桁成長は、この“AI需要の上乗せ”を抜きには語れません。
日本の投資家が見るべき“波及”
市場が大きくなるほど、恩恵は「チップを設計する会社」だけにとどまりません。チップを大量に作るには、その分だけ製造装置・検査・素材が必要になるからです。
- 製造装置:東京エレクトロン(8035)。チップを作る装置の世界大手。AIスコア80。
- 検査:アドバンテスト(6857)。チップが正しく動くか調べるテスタで世界トップ級。AIスコア82。
- メモリー:マイクロン(MU)・キオクシア(285A)。HBMやNANDで市場拡大の直接の担い手。
「市場規模が伸びている」というニュースは、半導体産業のどの層に効くのかをセットで読むと、点が線になります。市場全体の数字(マクロ)と、4層構造(ミクロ)を行き来できると、半導体の理解は一段深くなります。
まとめ
- 世界半導体売上はSIA集計で2024年約$627.6B(+19.1%)、2025年約$791.7B(+25.6%)。WSTSは2026年に約$975Bと予測し、$1兆ドルが視野に。
- 製品別ではロジック(約$212.6B・最大)とメモリー(約$165.1B・+78.9%、DRAMは+82.6%)が二強。AI向けGPUとHBMがけん引。
- 再加速の主因は生成AIという新規需要。エヌビディアは単体で売上$215.9B(FY2026)まで拡大。
- 市場拡大は装置・検査・素材へ波及。マクロの数字と4層構造を行き来して読むのがコツ。
本記事は情報提供のみを目的としたものであり、特定銘柄の売買や将来予測を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。市場規模・成長率はSIA(米半導体工業会)/WSTS(世界半導体市場統計)等の公表データ、用途別シェアは業界資料(2024年基準・概算)に基づきます。個社の財務数値はSEC EDGAR(一次データ)に基づきます。