「エヌビディア一強」はもう古い——年初来で主役が入れ替わった
2026年前半のAI半導体相場を一次データで見ると、多くの人が抱く「AI半導体=エヌビディア」というイメージとは、かなり違う景色が見えてきます。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の構成銘柄を、2026年の年初来(2025年12月末〜6月25日、米ドル建て・配当含まず)の株価騰落率で並べると、トップはマイクロン・テクノロジーの+325%。一方、これまでAIブームの象徴だった**エヌビディアは+5%**にとどまります(ピクテ・ジャパン作成資料(朝活Online「AI半導体相場の真相」田中純平氏), 2026/6/25)。
| SOX構成銘柄(一部) | 年初来騰落率 |
|---|---|
| マイクロン・テクノロジー(MU) | +325% |
| インテル(INTC) | +260% |
| マーベル・テクノロジー(MRVL) | +231% |
| アーム・ホールディングス(ARM) | +218% |
| アプライド・マテリアルズ(AMAT) | +160% |
| AMD | +149% |
| グローバルファウンドリーズ(GFS) | +147% |
| ラムリサーチ(LRCX) | +135% |
| (参考)SOX指数 | +97% |
| エヌビディア(NVDA) | +5% |
出典: 同上(ピクテ・ジャパン作成、2026/6/25時点)。これは過去の騰落率であり、将来の値動きを示すものでも、売買を推奨するものでもありません。
ポイントは「AI相場が終わった」ではなく、主役が広がったことです。GPUの一本足だった相場が、メモリー・CPU・製造装置へと裾野を広げている——これが今のAI半導体相場の「真相」です。以下、なぜそうなっているのかを一次データで分解します。
なぜメモリーが主役なのか——DRAMは「スーパーサイクル」
マイクロンが指数トップに立った背景は、メモリー価格の歴史的な高騰です。汎用DRAMのスポット価格を見ると、2024年初から2026年6月にかけて数倍〜20倍規模で跳ね上がっています(ピクテ・ジャパン作成資料, 2026/6/25)。
| DRAM 16Gb スポット価格 | 2024/1/2 | 2026/6/25 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| DDR4 | $3.22 | $67.19 | 約20.9倍 |
| DDR5 | $4.19 | $44.26 | 約10.6倍 |
出典: 同上。旧世代のDDR4がとりわけ急騰しているのは、AI向けの最新メモリー(HBM)へ製造能力が吸い寄せられ、汎用・旧世代DRAMの供給が細ったためです。この「HBM需要の爆発 → メモリー3社(サムスン・SKハイニックス・マイクロン)の能力配分 → 汎用DRAM/NANDが逼迫 → 価格急騰」という連鎖は、メモリーチップ不足は「なぜ解消が難しい」のかやマイクロンの記録的決算で詳しく解説しています。
つまりマイクロンの株価上昇は「雰囲気」ではなく、価格×数量が同時に上がるメモリー市況の実態を反映したものです。ただし市況は反転もします。スポット価格は変動が大きく、ピーク後に急落する歴史を繰り返してきた点も忘れてはいけません。
- 1第1波:GPU一強(エヌビディア)AI学習需要でGPUが独走。相場の象徴だった
- 2第2波:メモリーへ拡散(マイクロン 年初来+325%)HBM需要爆発→DRAMスーパーサイクル(DDR4は約20.9倍)
- 3同時進行:CPU・製造装置(インテル+260%/AMD/アプライド)推論・AIエージェント普及でCPU演算需要が上昇
- 4足元:エヌビディアは年初来+5%と一服主役が入れ替わり『相場の広がり』が鮮明に
- 5🛡 次:チップの外(スペースXのAI)へ?米系証券はAI売上2030年に約100倍と試算(FT報道・要検証)
GPUの隣で「CPU」も効き始めた——インテル・AMDのCEO発言
相場の広がりを象徴するのが、**CPU(中央演算処理装置)**の再評価です。AIサーバーはGPUだけでは動かず、GPUを束ねて制御するCPUが必ず必要になります。両社の最新決算会見で、経営トップが需要の変化に言及しました。
- インテル リップブー・タンCEO:「以前はCPUとGPUの比率は1対8だったが、今では1対4になっており、今後は同等、あるいはそれ以上になる」(インテル2026年1〜3月期決算会見)
- AMD リサ・スーCEO:「AI推論やAIエージェントの普及に伴い、サーバーCPUの演算需要が高まっている。サーバー向けCPUの最大市場規模が年率35%超で成長し、2030年までに1,200億ドル超に達すると見込む」(AMD2026年1〜3月期決算会見)
出典: インテル決算資料/AMD決算資料。学習(トレーニング)中心だったAI需要が、推論(インференス)・AIエージェントへと広がるにつれ、GPUの周辺にあるCPU・メモリー・ネットワークにも需要が波及する——これが「AI相場の裾野拡大」の中身です。なお、AMDの「1,200億ドル超」やCPU比率の変化は各社の見通し・認識であり、当サイトの予測ではありません。
これは「期待先行」なのか——SOXの予想EPSは前年比+130%
株価が上がると必ず出るのが「実態を伴わないバブルではないか」という問いです。ここで見るべきは市場予想EPS(1株あたり利益)の成長率。主要な株価指数の予想EPS成長率(前年比)を比べると、SOX指数の突出ぶりが分かります(ピクテ・ジャパン作成資料, 2026/6/25時点)。
| 株価指数 | 2026年 予想EPS成長率 | 2027年 予想EPS成長率 |
|---|---|---|
| S&P500 | +28% | +16% |
| ナスダック100 | +40% | +27% |
| マグニフィセント7 | +42% | +16% |
| SOX指数 | +130% | +39% |
出典: 同上。SOX指数の2026年の予想EPS成長率**+130%は、S&P500(+28%)の4倍以上。つまり半導体株の上昇は、少なくとも数字の上では利益(EPS)の急拡大という裏付け**を伴っています。株価が上がってもEPSがそれ以上に伸びれば、PER(株価収益率)はむしろ低下します。
ただし注意点が2つあります。第一に、これは**「予想」**であって確定値ではありません。前提が崩れれば成長率も変わります。第二に、高い成長期待はすでに株価に織り込まれている面があり、「予想EPSが高い=割安」を意味しません。強気・慎重の両論があり、StockCodeは将来の株価・指数を予測せず、買い時も示しません。
相場は「チップの外」へ広がる——スペースXの「AI売上100倍」予想
AI相場の広がりは、半導体そのものの外側にも及び始めています。象徴例が、上場観測(SpaceX上場(SPCX)を5分で)で注目されるスペースXです。英フィナンシャル・タイムズは「ゴールドマン・サックスはスペースXのAI売上高が2030年までに100倍になると予想」と報じました(評価額1.78兆ドル・IPOを裏付ける試算, Financial Times)。
| スペースX 部門別売上(米系証券予想) | 2025年(実績) | 2030年(予想) |
|---|---|---|
| AI | $3.2B(32億ドル) | $322B(3,220億ドル) 約100倍 |
| 通信(スターリンク等) | $11.4B | $144B |
| 宇宙(ロケット) | $4.1B | $8.3B |
出典: Financial Timesを基にピクテ・ジャパン作成(2026/6/25)。FTは「ロケット部門は2030年に83億ドルの売上を見込む(前年の43億ドルから増加)」とも報じています。
数字は強烈ですが、これは米系証券がIPOを後押しする文脈で示した強気の試算であり、実現が保証されたものではありません。AI売上$322Bはエヌビディアの現在の水準に匹敵する規模で、前提の妥当性には議論の余地があります。当サイトはこの予想の当否を判断せず、予測も行いません。——重要なのは金額の大小より、「AIマネーの物色対象がチップから、それを使うプラットフォーム(宇宙・通信)へ広がっている」という相場の方向感です。
スペースXのAI事業は何で稼ぐのか——TAMの内訳
では、そのAI売上はどこから生まれる想定なのか。スペースXが上場書類(S-1)で示した獲得可能な最大市場規模(TAM)の内訳(会社予想)を見ると、大半が企業向けアプリケーションです(スペースX S-1(SEC EDGAR)を基にピクテ・ジャパン作成)。
| スペースX AI事業のTAM構成(会社予想) | 割合 |
|---|---|
| 企業向けアプリケーション | 85.8% |
| AIインフラ | 9.1% |
| 消費者向けサブスク | 2.9% |
| デジタル広告 | 2.3% |
出典: 同上。TAM(Total Addressable Market)は「取りに行ける市場の最大値」であって、そのまま売上になるわけではありません。あくまで会社側が描く上限のシナリオの内訳である点に注意が必要です。
- 企業向けアプリケーション86%
- AIインフラ9%
- 消費者向けサブスク3%
- デジタル広告2%
まとめ
- 2026年前半のAI半導体相場の主役は入れ替わった。年初来でマイクロン+325%・インテル+260%に対し、エヌビディアは+5%。相場は「GPU一強」からメモリー・CPU・製造装置へ広がった(出典: ピクテ・ジャパン作成, 2026/6/25)。
- 背景はメモリーのスーパーサイクル。DRAMスポット価格はDDR4で約20.9倍・DDR5で約10.6倍に高騰。HBMへ製造能力が吸い寄せられた玉突きが効いている。
- 相場の上昇には利益の裏付けもある。SOX指数の2026年予想EPS成長率は**+130%**でS&P500(+28%)の4倍超。ただし「予想」であり、割高/割安の判断はPERと期待の掛け算で動く。
- AIマネーはチップの外にも広がる。スペースXのAI売上を「2030年に約100倍」とする米系証券の強気試算(FT報道)はその象徴。ただし試算であり実現は未確定。
- 数字はいずれも第三者の作成資料・報道・予想を含み、予測でも売買推奨でもない。強気・慎重の両論を踏まえて読むことが大切。
本記事は情報提供のみを目的とし、特定の銘柄・指数の売買や投資手法を推奨するものではありません。数値は出典に基づき記載していますが、予想・試算・番組で紹介された第三者作成資料を含み、将来の結果を保証しません。株価騰落率は過去の実績であり、将来の値動きを示すものではありません。投資の判断はご自身の責任と最新の一次情報に基づいて行ってください。
