「PERが割安だから」「ROEが高い優良企業」——投資の話で当たり前のように飛び交うこの3語。なんとなく分かったフリで通り過ぎていないでしょうか。実はこの3つ、測っているものがまったく違います。混ぜて覚えると一生モヤモヤします。逆に、役割を一度切り分ければ、決算の数字が急に「読める」ようになります。
この記事では、当サイトが一次データ(SEC EDGAR)から取得したエヌビディア(NVDA)の実数字を主役に、トヨタ(7203)・キーエンス(6861)も交えながら、3つの指標を体に入れていきます。
まず結論:3つは「別々のものさし」
ざっくり言うと、こうです。
| 指標 | 何を測る? | 一言でいうと |
|---|---|---|
| 利益率 | 売上のうち、いくらが利益として残るか | 「儲かる体質か」 |
| ROE | 株主の元手(自己資本)をどれだけ利益に変えたか | 「お金の使い方がうまいか」 |
| PER | 株価が1株あたり利益の何年分か | 「割高か割安か(の目安)」 |
利益率とROEは会社の中身(実力)を測る指標。PERだけは株価が絡む=市場の期待が入る指標です。ここを分けるのが第一歩です。
- ·100円売っていくら残るか
- ·儲かる体質=価格決定力
- ·純利益÷売上高
- ·事実(決算書から計算)
- ·元手をどれだけ増やせたか
- ·資本の使い方のうまさ
- ·純利益÷自己資本
- ·事実(利益率とは別の階層)
- ·株価が利益の何年分か
- ·市場の期待が入る
- ·株価÷1株あたり利益
- ·株価しだいで日々動く
① 利益率 — 「100円売って、いくら残る?」
一番イメージしやすいのが利益率(純利益率)です。式は単純で、純利益 ÷ 売上高。
エヌビディアのFY2026(直近通期)を見てみましょう。
- 売上高:$215.9B(前年比+65.5%)
- 純利益:$120.1B
- 純利益率:55.6%
つまり「100円売ったら、55.6円が手元の利益として残る」ということ。これは尋常ではない数字です。普通のビジネスは、売っても材料費・人件費・税金が次々に引かれ、最後に残るのは数円〜十数円。たとえば当サイト掲載のアマゾン(AMZN)は売上$716.9Bと巨大ですが、利益率は10.8%。100円売って残るのは約10.8円です。
売上の大きさと「儲かる体質」は別物だと、この2社を並べるとよく分かります。アマゾンのほうが売上は3倍以上大きいのに、1円あたりの効率はエヌビディアが圧倒的。利益率は、その会社が値段をつける力(価格決定力)を持っているかどうかを映す鏡なのです。
② ROE — 「元手をどれだけ増やせた?」
次がROE(自己資本利益率)。式は 純利益 ÷ 自己資本。株主が出したお金(元手)を、会社が1年でどれだけ利益に変えたかを示します。
エヌビディアのROEは76.3%。預けた元手100に対して、1年で76の利益を生んだ計算です。日本では「ROE 8%が一つの合格ライン」とよく言われるので、その異常さが伝わると思います。
ここで大事なのは、利益率が高い=ROEも高い、とは限らないこと。ROEは「少ない元手で大きく稼ぐ」ほど高くなるため、薄利でも資本を効率よく回転させる商売だと高くなることもあれば、利益率が高くても自己資本を厚く抱えていれば下がることもあります。利益率は「1回の取引の旨み」、ROEは「資本全体の回し方」——測っている階層が違うのです。
③ PER — 「株価は利益の何年分?」
最後がPER(株価収益率)。式は 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)。「いまの株価は、1年分の利益の何倍で買われているか」を表します。PERが15倍なら「利益15年分の値段」というイメージです。
ポイントは、PERだけ株価という“市場の気分”が入ること。利益率やROEは決算書から計算できる事実ですが、PERは日々動く株価しだいで変わります。一般に、市場が「これからもっと伸びる」と期待する企業ほどPERは高くなりがちです。
たとえばエヌビディアのFY2026のEPS(1株あたり利益)は$4.90。仮に株価がEPSの30倍で取引されていればPERは30倍、50倍なら50倍——というように、株価とEPSの比で機械的に決まります。高PER=割高で危険、低PER=お買い得、と単純化できないのが難しいところ。高PERは「期待が大きい」裏返しでもあり、低PERは「期待されていない」サインのこともある。PERは単独で良し悪しを決めず、利益率・ROE・成長率とセットで眺めるのが鉄則です。
(※当サイトは特定銘柄の株価予測や売買判断は行いません。PERは「考え方」として押さえてください。)
日本企業で“性格の違い”を見る
同じ「優良」でも、光り方は会社によって違います。当サイトが各社の事業特性を独自に数値化したテーマスコア(0〜100)で見ると——
- トヨタ(7203):自動化スコア92。膨大な生産・販売規模を、カイゼンとサプライチェーンの効率で回す“スケールで稼ぐ”タイプ。
- キーエンス(6861):自動化スコア95、AIスコア68。FAセンサーで知られ、高付加価値・高採算で“利益率の高さ”が語られる代表格。
- エヌビディア(NVDA):AIスコア98。利益率55.6%・ROE76.3%という、価格決定力で稼ぐタイプ。
スコアはあくまで事業がどのメガトレンドに晒されているかの目安ですが、「規模で稼ぐ会社」と「単価で稼ぐ会社」では、注目すべき指標も変わってくる、という感覚がつかめれば十分です。
まとめ
- 利益率は「100円売っていくら残るか」=儲かる体質。エヌビディアは55.6%、アマゾンは10.8%。売上の大きさとは別物。
- ROEは「元手をどれだけ増やしたか」=資本の使い方のうまさ。エヌビディアは76.3%と桁外れ。利益率の高さとは必ずしも一致しない。
- PERは「株価が利益の何年分か」=市場の期待。事実(利益率・ROE)と違い株価が入るので、単独では判断しない。
- 3つは別々のものさし。事実(利益率・ROE)→ 期待(PER)の順で見ると、企業の“性格”と“値段”の関係が読めるようになります。
次に決算ニュースを見たら、まず利益率で体質を、ROEで効率を確かめてみてください。数字が物語に変わります。
本コンテンツは情報提供のみを目的としたものであり、特定銘柄の売買や投資判断を推奨するものではありません。財務数値はSEC EDGAR等の一次データに基づきます。