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アップルが“ブラックリストの中国メモリ”から買おうとしている——FT報道をファクトチェックすると、『AIが奪ったDRAM』と“2つの制裁リスト”が見えてくる

FT報道で話題の「アップルが米制裁リスト企業からメモリを買う」。相手は中国最大のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲)。一次情報をたどると、AI向けHBMが従来DRAMの供給を奪い価格が急騰→アップルが値上げに追い込まれ→“買いにくい”中国勢に頼る、という連鎖が見える。一方で「CXMTは商務省エンティティリストに未掲載=買う行為自体は直接禁止ではない」という“2つのリスト”のねじれも。強気・慎重の両論を出典付きで中立に解説。

アップルが“ブラックリストの中国メモリ”から買おうとしている——FT報道をファクトチェックすると、『AIが奪ったDRAM』と“2つの制裁リスト”が見えてくる
画像: "RAM Module (SDRAM-DDR4)" by ElooKoN / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
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3行まとめ
  • FT(2026-06-27)が「アップルが米国の制裁対象とされる中国企業からメモリチップを買おうと、トランプ政権に承認を求めている」と報道。相手は中国最大のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲)。既存サプライヤー(マイクロン・サムスン・SKハイニックス)の供給逼迫を受けた調達先多様化とされる(出典: Bloomberg/Fortune/EngadgetによるFT報道)。
  • 背景はメモリの歴史的高騰。AI向けの高帯域メモリ(HBM)が利益率の高さから大手3社の生産能力を吸い上げ、スマホ・PC向けの従来型DRAMが品薄に。TrendForceによれば契約DRAM価格は2026年Q1に前期比約+90%、Q2にさらに約+60%。アップルは6月25日にMac/iPad等を値上げした(出典: TrendForce, Business Model Analyst, Engadget)。
  • ただし“ブラックリスト”には注意。CXMTが載るのは主に国防総省の「中国軍事企業(1260H)」リストで、これは米政府の調達を縛るもの。取引制限の本丸である商務省エンティティリストには現時点で正式掲載されておらず、米企業が「CXMTから買う」こと自体は直接禁止ではない。アップルは“将来エンティティリストに追加されない保証”を求めているとされる。買い時・将来株価は予測しません(出典: WilmerHale, BIS, Fortune)。
この記事で学べること
  • 1「アップルが制裁対象の中国企業からメモリを買う」というFT報道の中身
  • 2AI向けHBMが従来型DRAMの供給を奪い、価格が歴史的に高騰している構図
  • 3“ブラックリスト”は1つではない——1260Hと商務省エンティティリストの違い
  • 4メモリ大手3社(サムスン・SKハイニックス・マイクロン)への強気・慎重の両論
数字で見る
契約DRAM(26年Q1)
約+90%
前期比・TrendForce
契約DRAM(26年Q2)
約+60%
前期比・TrendForce
HBMのDRAMウェハ比率
約23%
25年の約19%から
iPhone上位機の12GB DRAM部材
$39→$145
TechInsights試算
本文に登場する主要数値の早見。出典は記事末尾を参照。
AIAIまとめ
AI生成

FT(2026-06-27)が「アップルが米国の制裁対象とされる中国企業からメモリチップを買おうと、トランプ政権に承認を求めている」と報道。相手は中国最大のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲)。既存サプライヤー(マイクロン・サムスン・SKハイニックス)の供給逼迫を受けた調達先多様化とされる(出典: Bloomberg/Fortune/EngadgetによるFT報道)。 背景はメモリの歴史的高騰。AI向けの高帯域メモリ(HBM)が利益率の高さから大手3社の生産能力を吸い上げ、スマホ・PC向けの従来型DRAMが品薄に。TrendForceによれば契約DRAM価格は2026年Q1に前期比約+90%、Q2にさらに約+60%。アップルは6月25日にMac/iPad等を値上げした(出典: TrendForce, Business Model Analyst, Engadget)。 ただし“ブラックリスト”には注意。CXMTが載るのは主に国防総省の「中国軍事企業(1260H)」リストで、これは米政府の調達を縛るもの。取引制限の本丸である商務省エンティティリストには現時点で正式掲載されておらず、米企業が「CXMTから買う」こと自体は直接禁止ではない。アップルは“将来エンティティリストに追加されない保証”を求めているとされる。買い時・将来株価は予測しません(出典: WilmerHale, BIS, Fortune)。

※ 情報提供のみを目的とした要約です。投資助言ではありません。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)が2026年6月27日、「アップルが、米国の制裁対象とされる中国企業からメモリチップを買おうとしている」と報じ、話題になっています。アップルはトランプ政権に対し、その購入の"お墨付き"を求めている——というのです。

一見すると「あのアップルが、わざわざ制裁リストの中国企業から?」と驚く話です。ですが、出てきた断片を鵜呑みにせず、一次情報や信頼できる二次情報にあたって整理していくと、①AIが従来型メモリの供給を「食って」価格が歴史的に高騰している、②そのしわ寄せでアップルが値上げに追い込まれている、③だから"買いにくい"はずの中国勢にまで調達先を広げようとしている——という、きれいな因果の連鎖が見えてきます。

さらに、見出しの「ブラックリスト」という言葉にも注意が要ります。実は「アップルがCXMTから買うこと自体は、現時点で直接禁止されているわけではない」という、"2つの制裁リスト"のねじれがこの話の核心です。順番にほどいていきます。

図解メモリ価格はどれだけ上がったか(2025年比のおおよその倍率)
DDR5メモリ
約3.5〜4倍
DDR4メモリ
約2倍
2025年(基準)
1倍
市販メモリの値上がりの目安。数値は本文の出典(TrendForce/SoftwareSeni)より。厳密な指数ではなくレンジの代表値。

何が報じられたのか(事実の整理)

報道の柱を、確認できた範囲で整理します。

論点内容出典
相手企業中国最大のDRAMメーカー CXMT(長鑫存儲 / ChangXin Memory)。安徽省・合肥拠点Bloomberg 2026-06-27
アップルの動き商務省などトランプ政権に、CXMTからのメモリ調達の承認と、CXMTを商務省リストに「追加しない」保証を求めて働きかけEngadget / Fortune 2026-06-27
既存の調達先マイクロン(米)、サムスン、SKハイニックス(韓)Engadget 2026-06-27
政治的な反発米下院・対中特別委員長が「中国の軍事企業との提携は重大な誤り」と反対の意向Engadget 2026-06-27

なお「どの製品の・どの種類のメモリか(iPhone向けのLPDDRか等)」までは、現時点の二次報道では特定できていません。本記事では「従来型メモリ全般」として扱い、断定は避けます。

図解
  1. 1
    AI需要でHBMが急拡大
    利益率が高くデータセンター向けに殺到
  2. 2
    大手3社がHBMへ能力シフト
    サムスン・SKハイニックス・マイクロン
  3. 3
    従来型DRAM/LPDDRが品薄
    スマホ・PC向けの供給が奪われる
  4. 4
    メモリ価格が歴史的高騰
    契約DRAMがQ1約+90%・Q2約+60%(TrendForce)
  5. 5
    🛡 アップルが調達先を多様化
    制裁リスト企業CXMTにまで打診(FT報道)
AI向けHBMが大手3社の生産能力を吸い上げ、従来型DRAMが品薄になって価格が高騰。そのしわ寄せでアップルがコスト圧迫を受け、“買いにくい”はずの中国CXMTにまで調達先を求める、という連鎖。

なぜ今アップルが動くのか——AIに"食われた"DRAM

背景にあるのは、メモリ価格の歴史的な高騰です。原因はシンプルで、AI向けの「HBM(高帯域メモリ)」が、スマホやPCに使う従来型DRAMの生産能力を奪っていることにあります。

HBMはAIデータセンター向けに需要が爆発しており、利益率も従来型DRAMよりはるかに高いとされます。そのため大手3社(サムスン・SKハイニックス・マイクロン)はこぞって生産能力をHBMに振り向け、結果として残った従来型DRAM/LPDDRが品薄になりました。

指標数字出典
契約DRAM価格(2026年Q1)前期比 約+90%TrendForce 2026-05-18
契約DRAM価格(2026年Q2)前期比 さらに約+60%TrendForce 2026-05-18
DDR5メモリ(市販)2025年比 約3.5〜4倍SoftwareSeni 2026
HBMがDRAMウェハ生産に占める比率23%(2025年の約19%から上昇)tech-insider.org 2026
iPhone上位機の12GB DRAM部材コスト(試算)約**$39 → 約$145**TechInsights試算(Business Model Analyst 2026)

このコスト増を受けて、アップルは2026年6月25日、Mac・iPad・Apple TV・HomePod・Vision Proなど、ほぼ全ハードのラインを"スペック据え置きのまま"値上げしました(iPhoneの価格は据え置き)。メモリ価格の上昇が、消費者向け製品の値札に直接届き始めた——というのが今の局面です(出典: Engadget 2026-06-27、Business Model Analyst 2026)。

相手は誰か——中国最大のDRAMメーカーCXMT

CXMT(長鑫存儲)は、中国最大のDRAMメーカーで、世界では4番手前後とされます。市場シェアの推計はソースによって幅がありますが、おおむね世界供給の4〜5%程度という見方が多いです(installed capacityベースではより高い推計もあり、数字は割れます。出典: 各種業界推計)。

近年はDDR5やLPDDR5Xの自国産モジュールを公開するなど技術的に追い上げており、低コストの挑戦者として存在感を増しています。一方で、(a) 知的財産を巡る懸念(マイクロンは自社特許の侵害可能性を指摘してきた経緯があり、CXMTはRambusやPolaris等からのライセンスで「クリーンだ」と反論)、(b) 米政府による安全保障上の警戒——という2つの論点を抱えています(出典: Tom's Hardware、DigiTimes)。

"ブラックリスト"の正体——2つのリストのねじれ

ここがこの話のいちばん面白い部分です。「ブラックリスト」と一口に言っても、米国には性格の違う2つのリストがあり、CXMTが載っているのは主に前者です。

リスト性格CXMTへの効果出典
国防総省「中国軍事企業(1260H)」リスト政府の調達を縛る(民間の購入を直接は禁じない)国防総省の調達禁止が2026-06-30、製品禁止が2027-06-30に段階発効WilmerHale 2026-06-11
商務省「エンティティリスト」取引制限の本丸。listed企業へ米国原産品を売るのを許可制にするCXMTは現時点で正式掲載されていない(追加観測は出ている)BIS / Mayer Brown

ポイントは2つです。第一に、エンティティリストが縛るのは原則「listed企業に売る」行為であって、「listed企業から買う」行為ではありません。第二に、CXMTがいま載っているのは主に国防総省の1260Hリストで、これは米政府の調達を縛るもの。つまり「アップルがCXMTから買う」こと自体は、現時点で法律上直接禁じられているわけではないのです。

ではアップルは何を求めているのか。報道を総合すると、アップルの懸念は「今買えるか」よりも「将来、CXMTが商務省エンティティリストに追加されて、取引が突然壊れる/自社の評判が傷つく」リスクにあります。だからこそ、政権に「追加しない保証」を求めている、という構図です(出典: Fortune 2026-06-27、WilmerHale)。なお、CXMTの1260H掲載状況については「除外」「再掲載」と報道が錯綜しており、最新の正式ステータスは要確認です。

メモリ大手3社と市場の見方(両論併記)

DRAMの世界供給の95%超を握るのが、サムスン(韓・005930)、SKハイニックス(韓・000660)、マイクロン(米・NASDAQ: MU)の3社です。AIメモリ需要を追い風に、各社は記録的な決算を出しています(例: TrendForceはサムスンのメモリ平均単価が2025年通年平均比+146%、SKハイニックスのDRAM単価が前期比mid-60%上昇と報告。出典: TrendForce 2026-05-18)。

この発表をどう読むかは、強気・慎重で割れています(いずれも各社・各社の見方であり、StockCodeの売買推奨ではありません)。

  • 強気(メモリ・スーパーサイクル論): モルガン・スタンレーは、AIメモリ需要を背景に好況が2027年まで続くとの見方を示し、かつての「メモリ・ウィンター」論から強気に転換したと報じられています(出典: Morgan Stanleyの見方/二次集計, 2026)。
  • 慎重①(CXMTの脅威は限定的): 24/7 Wall St.は「マイクロンは心配無用」と論じ、CXMTの規模と従来型DRAM中心の事業構成では、HBMで稼ぐ大手3社の値付け力を脅かすには至らないと指摘します(出典: 24/7 Wall St. 2026-06-27)。
  • 慎重②(中長期の供給過剰リスク): 3社同時の能力拡張が2027〜2028年に新工場として立ち上がると、供給過剰に振れて単価・利益率がピークアウトする、という古典的な半導体サイクルのリスクも指摘されています(出典: 業界各種)。

なお、「アップルや他の欧米メーカーがCXMTを大規模に採用すれば、低コストの中国製DRAMが従来型メモリの値付けの上限になりうる」という"圧力シナリオ"も語られますが、現時点で著名アナリストが短期の業績影響を定量化したものは確認できておらず、まだ概念的な議論にとどまります。

まとめ

  • FTは「アップルが米制裁対象とされる中国CXMTからメモリを買おうと、政権の承認を求めている」と報道。相手は中国最大のDRAMメーカーで、調達先の多様化が狙いとされる。
  • 直接の引き金は、AI向けHBMが大手3社の能力を吸い上げ、従来型DRAMが品薄→価格が歴史的に高騰したこと。契約DRAMは2026年Q1に前期比約+90%、Q2にさらに約+60%(TrendForce)。アップルは6月25日にMac等を値上げした。
  • "ブラックリスト"は1つではない。CXMTが載るのは主に国防総省の1260H(米政府の調達を縛る)で、商務省エンティティリスト(取引の本丸)には現時点で正式掲載されていない。「買う」こと自体は直接禁止ではなく、アップルは"将来追加されない保証"を求めているとされる。
  • メモリ大手3社は記録的決算。強気(スーパーサイクル継続)と慎重(CXMTの脅威は限定的/中長期の供給過剰)の両論があり、StockCodeは将来の株価や「買い時」を予測しない。

本記事は情報提供のみを目的としたものであり、特定の証券の購入・売却を推奨するものではありません。記載の数値・見解は各出典の公表時点のものであり、将来の株価や業績を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

💡この記事の本質
  • 見出しの“ブラックリスト”は1種類ではない。CXMTが載るのは主に国防総省1260H(政府調達を縛る)で、取引の本丸=商務省エンティティリストには現時点で正式未掲載。
  • だから「アップルがCXMTから買う」こと自体は直接禁止ではなく、論点は“将来追加されない保証”をどう取り付けるか。
  • 根っこにあるのはAIメモリの逼迫。投資の論点は“中国勢の参入”より、まず“HBMが従来DRAMを奪う構図がいつまで続くか”。買い時や将来価格は予測できない。
よくある質問
アップルがCXMT(中国のメモリ企業)から買うのは、違法ではないのですか?
現時点で「アップルがCXMTから買う」こと自体は、米国の法律で直接禁止されているわけではありません。CXMTが主に載っているのは国防総省の『中国軍事企業(1260H)』リストで、これは米政府の調達を縛るもので、民間企業の購入を直接は禁じません。取引制限の本丸である商務省エンティティリストは『listed企業へ米国原産品を売る』のを許可制にする仕組みで、CXMTは現時点で正式掲載されていません。アップルの懸念はむしろ『将来エンティティリストに追加されて取引が壊れる』ことで、政権に追加しない保証を求めているとされます(出典: WilmerHale 2026-06-11, BIS, Fortune 2026-06-27)。
なぜメモリがこんなに値上がりして、アップルまで影響を受けているのですか?
AI向けの高帯域メモリ(HBM)が、利益率の高さから大手3社(サムスン・SKハイニックス・マイクロン)の生産能力を吸い上げ、スマホ・PC向けの従来型DRAMが品薄になっているためです。TrendForceによると契約DRAM価格は2026年Q1に前期比約+90%、Q2にさらに約+60%上昇しました。アップルはこのコスト増を受けて、2026年6月25日にMac・iPad・Apple TVなどをスペック据え置きのまま値上げしています(出典: TrendForce 2026-05-18, Engadget 2026-06-27)。
メモリ大手3社の株は『買い』ですか?
StockCodeは個別銘柄の売買推奨や将来の株価予測は行いません。市場には『AIメモリのスーパーサイクルは2027年まで続く』という強気(例: モルガン・スタンレー)と、『CXMTの脅威は限定的(24/7 Wall St.)』『中長期では供給過剰でピークアウトしうる』という慎重論の両方があります。いずれも各社・各メディアの見方であり、最終判断はご自身でお願いします(出典: Morgan Stanleyの見方の二次集計, 24/7 Wall St. 2026-06-27)。
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